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「PRIDE復活!」と話題になった、総合格闘技イベントRIZINの初日に行ってきた。期待をはるかに超える面白さ、盛り上がりだった。そして、日本のメジャー総合格闘技は再起動したと言っていいだろう。

昼に福井で講演会があったので、後半のトーナメントリザーブマッチ、1回戦、そして青木真也対桜庭和志しか見ることができなかった。全部を見たわけではないという前提で読んで頂きたい。

日本の総合格闘技の過去、現在、未来をつなぐ、そしてメジャー総合格闘技を再起動する興行だと感じた。私は、90年代前半の、K-1やVTJが立ち上がった頃に総合格闘技にハマり、社会人になってからはPRIDEやK-1に通っていた。しかし、PRIDEが消滅して以降は、テレビでもあまり見なくなってしまっていた。しかし、総合格闘技は続いていた。進化していた。

この大会の開催が決まり、メインイベントの一つが青木真也対桜庭和志だと発表された後、私は、青木真也選手にインタビューしている。

【直撃インタビュー】青木真也はなぜ、レジェンド桜庭和志と戦うのか?
http://sirabee.com/2015/11/08/58035/

その席で、青木選手は、日本の格闘技シーンをもう一度メジャーに持っていく、さらには、前座の試合にも注目して欲しい、そこから新しいスターが出てくればという趣旨のことを言っていた。

この言葉の意味を、会場に行って、帰宅してテレビを見て、よく理解した。そこにあったのは、私がPRIDEに通っていた2000年代のシーンよりさらに進化した総合格闘技だった。トーナメント1回戦およびリザーブマッチはすべて綺麗に決着がつき。攻防もスリリングで面白かった。当時の「負けない試合」ではなく、全力で勝ちに行くスタイルだった。予習ほぼゼロで行ったので、ほぼ選手の名前は知らなかったが、技術もコンディションも、キャラもいい感じだった。

それにしても、青木真也対桜庭和志である。この試合が発表された時から「青木真也が負けるわけがない。問題は、なぜやるか、どう勝つか、そこからどんな広がりが生まれるか」ということこそが問題だと私は思っていた。インタビューの席でもその件は彼に伝えた。彼は格闘技にとことんストイックな男である。今回も、恒例のシンガポール合宿を敢行していた。

結論から言うならば、青木真也はこの大きな責任を見事に果たしきったといえるだろう。リングの上にあるのは残酷な現実だった。グレイシーハンターと言われた桜庭和志と現在の日本を代表する格闘家青木真也の一戦は、残酷なまでの殴り合いだった。いや、この表現は正しくない。殴り「合い」ではない。約6分間、青木真也は一方的に桜庭和志を殴り続けた。桜庭和志は最初にキックを出したが、青木真也にかわされた。その後は、防戦一方だった。一応、グローブなどでガードしようとしていて、青木真也のパンチはその上から当たっているように見える。とはいえ、テレビ放送を見直してみると、それでもダメージはあっただろう。青木真也のパンチが時折、全盛期の桜庭が見せたようなチョップのようなパンチだったことも印象的だった。

テレビで見たプロフィールでは、この日の体重はほぼ同じ77キロだと発表されていたが、明らかに桜庭和志の方が大きく見える。その桜庭和志相手に終始、マウントポジションを取りつつ、殴り続けた。寝技で有名な青木真也がである。しかも、この殴り方というのが、90年代のヒクソン・グレイシーとも重なって見えた。彼もこの試合をリングサイドで観戦していた。

試合は、セコンドからのタオル投入で決着した。素人の意見で申し訳ないが、率直に、レフリーやセコンドはもっと早く止めてよかったと思う。のちの報道によると、青木真也選手はこの件についてインタビューで苦言を呈していたという。テレビでも、試合直後、なんで早く止めないんだと抗議していたことが伝えられている。桜庭の顔面はどんどん赤くはれていたし、最後は流血していた。

もっとも、止めづらかったのも事実だろう。ちゃんと意識はあったし、ガードしていたといえばしていた。すれすれまで相手の技を受けつつチャンスを伺うのも桜庭のスタイルである。

正直、桜庭和志の身体はボロボロだと思う。最近はプロレスの試合の方が圧倒的に多いわけで。そんな状況でも現在の日本を代表する格闘家のパンチを最後まで受け続ける桜庭に、これはこれでプロを感じた次第である。

会場人気でも、正直、桜庭コールの方が青木コールよりも大きく聞こえた。この模様はヤフトピでも報じられたが、桜庭敗れるという見出しになっており、桜庭和志がいかにレジェンドであり、知名度が高いかということを再確認した次第である。翌日のヤフトピは、青木真也によるレフリーへの苦言という話だったが。

ただ、こういうことも含めて昔、格闘技に熱くなった私のようなファンや、新たなファンが振り向くのだろう。そして、「今さら?」という疑問のある曙対ボブ・サップに関しても、理解できたような気がした。テレビ向けのカードではある。ただ、これに関心を持ちつつも、今のエースたちによるトーナメントを見て欲しいのだと。そして、2000年代の格闘技をリスペクトしつつ、新時代を創るという行為なのだと。

総合格闘技というのは別に大会場でやってテレビ中継されるのが全てではない。むしろ、小さな大会が増え、競技者も増えていったというのがPRIDE後の変化ではある(もっとも、一部、メジャーの大会も放送もあったのだが)。この地道な日々というのも忘れてはならない。

率直に当初は、バタバタ感、寄せ集め感という印象があったRIZINだが、期待以上に楽しめるイベントだと思った次第だ。みんな、大晦日はRIZINをチェックだ。

・・・今年の紅白がスゴすぎるし、お目当てが青木対桜庭だったので、大晦日は紅白をメインとしつつ、RIZINと何度もチャンネル変えちゃいそうだなあ。必ず録画はする。うん。次回大会も楽しみ。