
大学を卒業する皆様へ
卒業、おめでとう。
私は、学生からの内定報告に「おめでとう」とは言わない。入社した人に対しても「一緒に頑張ろうぜ」とは言うが「おめでとう」とは言わない。別にその会社に入ることがエラいとは思わない。ましてや、入社は互いに決めたことであって、互いに人生は約束できないからだ。
でも、大学卒業に対しては「おめでとう」と言う。
今年は震災の影響などで、卒業式がない大学も多数だった。母校一橋大学もないし、私が教えている実践女子大学もない。でも、これを機会に、ぜひ、駆け抜けた4年間に誇りを持ってほしい。振り返りをしてほしい。様々な喜怒哀楽があったと思うが、きっと大きく成長しているはずだ。
今、皆さんの前にはどんな視界が広がっているだろうか?きっと4年前とは違うはずである。成長を実感するはずだ。そして、期待と不安でいっぱいだろう。大地震、大津波、原発事故。それに伴う様々な制約、制限、自粛ムード。皆さんは、こんな中で社会人になる。
受験も就活も大変だったと思うが、これからの方がもっと大変だ。そして、ずっとずっと長い。世界は、日本は変化の真っ只中にいる。仮に震災が起こらなかったとしてもそうだった。毎日が決戦だ。さぁ、どうしよう。
夢や希望を持つことは大事だが、現実を知ることも大事だ。
この国は、ウソだ。
いくらキレイゴトを言ったところで、大震災の前で人間は無力だし、エリートも迷走した。
会社は、ウソだ。
会社説明会や、選考、内定式で見るほど会社は素敵ではない。
仕事は、ウソだ。
ビジネス誌に出ているケースほど、普段の仕事はかっこよくない。島耕作も、サラリーマン金太郎もいない。
学歴は、ウソだ。
皆さんは、大学の名前ほど有名でなければ、期待されるほど仕事ができないかもしれない。
就活は、ウソだ。
皆さんも、こんなイカサマな会社や世の中を見抜けなかったし、人事担当者の眼も節穴だったかもしれない。
友情も、ウソになるかもしれない。
「卒業してもずっとつながっていようね」某SNSの去年のCMはこうだった。でも、つながっていない人はいっぱいいる。Facebookやmixiで昔の友達を見かけても、声をかけるのは怖くなる。年収から恋愛から、できない話が増えてくる。
愛情だって、ウソになるかもしれない。
そして、ずっと続くと思っていた恋愛も最初のボーナスをもらうあたりで終わりを告げるかもしれない。そういう例をいくらでも見てきた。
これから、大切にするべきことは何だろうか?
言うまでもなく、大切なのは「当事者意識」である。自分はどうしたいのか?これを常に考えて行動しよう。自分の取り組みによって、国も、会社も、仕事も、友情も、愛情も変わると信じたい。少なくとも、見え方は変わる。
仕事とは、苦行プレイである。大変なことを代行してあげるから、価値は生まれ、お金はもらえるのである。
まず、「思い出」にしがみつくのはやめよう。学生時代に力を入れたことも、楽しい思い出も、いったん、いい。ましてや、老人たちの「思い出」に憧れても意味はない。就活の思い出も、もういいよ。就職難と言われる中、入社できる人は周りからうらやましがられたり、「意識の高い学生」とか言われたかもしれないが、もう学生じゃないし。
安定も、期待するな。そんな言葉がいかに幻想だったかが今回、わかっただろう。
学歴も、もういいよ。学歴は便利だ。一生懸命がっつかなくても、あなたのことをある程度説明してくれるから。ただ、これからはむしろ、学歴をコンプレックスに思った方がいい。みんなが期待するイメージほど、あなたは仕事ができないかもしれない。
やがて、大学時代は遠い遠い思い出になることだろう。思い出を振り返るのは、たまにでいい。でも、必ず成長しているはずだから、経験を活かす方法を考えよう。
まずは、眼の前のことをマジでやり続ける。これだと思う。昭和的と言われるかもしれないが、がむしゃらにやってみよう。仕事があることに感謝しよう。わかる人じゃなく、できる人になろう。
私が、皆さんに絶対勝てない点がある。それは、「若さ」である。私はマンションも外車も持っているし、妻は美人だ。でも、皆さんの若さだけには一生かかっても勝てないわけだ。
長々と書いてきたが、皆さんに言いたいことは
「若者らしさを自粛するな」ということである。
まぁ、ますます若者に厳しい時代になっているけど、だからと言って若者らしさを自粛してはいけない。
よく働け、よく学べ、よく遊べ。
いっぱい、汗と涙を流せ。
苦労は買ってでもしろ。
世の中の多様性に気づけ。
魂を空白化させてはいけない。
思想を退廃させてはいけない。
本と末をすりかえてはいけない。
偽善に走ってはいけない。
思ったことは、主張しよう。
生意気で結構。
排除の空気に唾を吐け。
でも、やると決めたらやりきれ。
オトナのハイは死んでもハイだ。
明日やろうは、バカヤローなんだよ。
皆さんが社会に羽ばたくのは我々オトナにとっても希望なのだ。
早く、私たちを退場させてくれ。
「こんな時代を明るくしたのはあいつらだ」
そのくらい、若さを自粛せずに日々生きようではないか。
卒業式は、自由な人生の葬式ではないのだ。
これからも、もっともっと、ずっとずっとだよ。
世の中を面白くしていこう。
改めて卒業おめでとう
今年で社会人15年目、37歳になるが、まだまだオトナになりきれていない常見陽平より

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