2018-06-09 15.11.24

Abema TVの「アベマプライム」に出演。経済評論家の上念司氏などとともに、「高度プロフェッショナル制度」について語った。よくある与野党の意見対立とは違った展開になって良かった、かな。いつもと違い、落ち着いた人モードで参戦だったのだが。

番組出演のために予習をしていて、ふと気づいたことがいくつか。その1は、経団連榊原前会長の発言。対象とする職種について「マーケティング」を明言している。

2018年1月22日の記者会見要旨より。

【高度プロフェッショナル制度】
高度プロフェッショナル制度は、従業員の処遇を時間ではなく、成果で評価する働き方であり、研究開発やマーケティングなどの専門的な職種を対象に柔軟な働き方の選択肢を提供するものである。連合の要望した内容通りに健康確保措置が強化されており、過重労働への歯止めもなされている。欧米では、時間にとらわれずに成果で仕事を評価するのが当たり前となっている。これは長時間労働の是正に逆行するものではなく、補完する施策である。時間にとらわれずに働くためには、生産性を向上することが求められる。なお、生産性が向上すれば、労使が協議し、それを何らかの形で従業員の処遇に還元していくことが必要である。

出所:経団連「記者会見における榊原会長発言要旨」(2018年1月22日)
http://www.keidanren.or.jp/speech/kaiken/2018/0122.html


2018年1月22日の段階では、もう法案の内容が固まっていた時期である。これは「記者会見要旨」という毎月のようにアップされる記事であり、明らかに発言内容が間違っていた場合は訂正されるタイプの記事である。にもかかわらず「マーケティング」が明言されている。言うまでもなく高プロの対象職種に「マーケティング」は存在しない。うがった見方ではあるが、これは将来の対象職種拡大の方向性を物語っていないか。企業によっては営業を「マーケティング」と呼んでいることもある。言うまでもなく、営業職は会社員の中でも割合の大きい職種である。経団連としての中長期の野望が見え隠れしていないか。

なお、2016年9月26日の記者会見でも触れていることを確認しておきたい。

【高度プロフェッショナル制度】
労働基準法改正案に盛り込まれた高度プロフェッショナル制度は、賃金を時間ではなく成果で評価する枠組みである。これは、長時間労働の是正や女性の活躍推進にも資するものであり、働き方改革と矛盾しない。高度プロフェッショナル制度は欧米では一般的な制度であり、研究開発やマーケティングに携わる労働者にとって、時間ではなく成果で評価される制度の方が働きやすくなる。自由な裁量で働く環境や制度を作ることは働き方改革にも大きなプラスになる。懸念される無制限に働くことへの歯止めをかける仕組みも盛り込まれており、新しい働き方のスタイルとして導入を期待したい。
「記者会見における榊原会長発言要旨」(2018年1月22日)
http://www.keidanren.or.jp/speech/kaiken/2016/0926.html


また、この件に関連して新経連の広報に確認したのだが、彼らからすると、高プロに関しては年収よりも、業種・業態や職種軸で対象を増やした方が望ましいとのこと。時差のある海外とやりとりする業務や、集中して事業を立ち上げるスタートアップなどだ。要するに彼らにとって使いやすいかどうかが問われる。

なんせ、この法案は検討の根拠も、プロセスも杜撰だし、与党が適切な説明をしないことが問題だと私は考えている。もっとも、働き方改革関連法案はこの高プロを除けば企業にとってほぼ規制強化だらけなので、与党も必死なのだろう。

この法案が通ってしまった後に何が起こるのか。私は実は企業が問われるのではないかと見ている。「時間より成果(法律はそれを促す可能性のあるものくらいであって、明言しているわけではないのだけど そして成果にこだわることは労働時間を増やすのだけど)」「柔軟な働き方でイノベーション」「高収入なものは会社に対して交渉力がある」などと言ったことがすべてウソだったことがバレた瞬間、日本企業の不甲斐なさを誰もが認識するだろう。それまでに過労死する者がでていなければいいのだけど。

労使関係も問われるだろう。この制度のもとで働くべきか。労働者は冷静に判断するべきだろう。もっとも、受け入れざるを得ない状態になることが懸念されるのだが。

労働者の怒りは燎原の火のごとく燃え広がりつつある。俗耳に馴染むスローガンに騙されず、断固たる大衆的反撃の闘いを燃えあがらせるのだ。