『女性セブン』の2018年6月28日号に柴門ふみの最新作『恋する母たち』の感想文を寄稿した。手前味噌だけど、数百文字に自分のはちきれんばかりの作品愛を表現できたような気がし。やや長い引用だが、こんな感じ。

これは「不倫糾弾社会」に撃つ 強烈な“柴門砲”にほかならない

何かと「不倫」が話題となる今日このごろ。著名人の不倫報道に「けしからん!」と思いつつも、実は羨望と失望が入り混じった感情があるのではないだろうか。そんな複雑な女心をくすぐるテーマ、「不倫ではなく、恋なら? 恋をしてはいけないのか?」が込められたのが、柴門ふみの最新作だ。恋する3人の母たちの息子は名門高校に通っているが、全員成績不良者。夫は駆け落ち、不倫、ニートなど様々な事情を抱えている。彼女はこれまでも様々な恋愛や、家族のあり方、女性の生き方を描いてきたが、世界観、設定、ストーリー展開など、これは新しい代表作と言うべき完成度ではないか。問いかけるのは「人は誰と生きるのか?」ということだ。「性」という字は「心が生きる」と書く。仕事や家事の役割分担などが変わり、また恋愛の姿が婚姻関係を超えることもある中、物語に登場する女性たちは、罪悪感が漂いつつも、どこかイキイキしている。旧来のものさしで不倫を糾弾する社会に対し、この柴門砲は強烈な問題提起だと言えるだろう。ドラマ化、映画化なども期待している。ポジティブな論争を巻き起こそう。
『女性セブン』2018年6月28日号より


ここに書いたことがほぼすべてなのだが。実に久々に完成度の高い柴門ふみ作品だった。そう、なんせ『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同級生』など80年代後半〜90年代前半にドラマ化され大ヒットした作品で語られがちな彼女。なんせあの頃はテレビの影響力が強いし、若者の数も多かったわけなのだけど。それ以降、それほどのヒットに恵まれなかったのもまた事実ではないか。作品の中身にしても、その時代時代の恋愛の姿を描こうとしつつ、空回りしているものも散見された。

もっとも、どんな作家でも中身とセールスの当たり外れはあり得るわけで。過度に期待してもいけない。

とはいえ、90年代以降の柴門ふみ作品は玉石混交感があった。オリジナル作品の完成度で言うならば『小早川伸木の恋』以来ではないか。いや、数年前の『東京ラブストーリー after 25 years』も佳作だったのだが。ここ数年、復活基調だったということか。

かなりのベテランでありつつも、今どきの30代、40代の既婚者も含めた恋愛事情に関する見識と、それを貫く視点、コンセプトは実に秀逸だ。ぜひ、ドラマ化、映画化も期待したい。

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さて、うちの娘は将来、どんなパートナーを連れてくるのかな。威圧するために、今日も筋トレ頑張る。