『宣伝会議』最新号に掲載された電通のコピーライター阿部広太郎さんとの対談が、ウェブにもアップされた。途中まで読める。無料会員登録したら、最後まで読める。

働き方改革とコピーライター:千葉商科大学・常見陽平×電通・阿部広太郎 https://mag.sendenkaigi.com/senden/201705/super-copywriter/010472.php?utm_medium=social&utm_source=fb&utm_campaign=so_sk20170410_010472

渦中の電通の方と、「働き方」について誌上で議論するというのは、なんて貴重な、稀有な体験なのだろう。うん、『宣伝会議』だから実現したのかもだが、電通は記者会見やプレスリリースだけでなく、もっと社内を取材させたらいいのに。社員の働き方を語らせたらいいのに。

と、いきなり電通に対する愚痴になってしまい、申し訳ない。

この対談で良かったことと言えば、「いい仕事とは何か」という話から始まったこと。「働き方改革」はいつの間にか「残業時間減らす改革」にすり替わってしまっている。いや、これはこれで今、そこにある問題だし、向き合わなくてはならない。

ただ、「働き方を変える」なんてことを言う前に、そもそも「いい仕事」とは何か?という定義が大事だと思うのだ。これを定義しないまま、時間を減らすことの目的化(これはこれで大事だと認識していると、揚げ足をとられないために、保身のために何度も主張しておくが)では、社員が精神的に疲れるだけだ。いつの間にか、昭和の春闘みたいな話に終始し、疲れてしまう。

今後の電通マンにとっての、コピーライターにとっての「いい仕事」を定義しなくては話が進まない。その上で、では、その仕事をするために必要な力は何か、それを時間内で終わらせるためにはどうすればいいかというすり合わせが必要なわけで。

何度も主張していることだが、働き方改革の根本的・普遍的矛盾は、目標を下げないのに、仕事の絶対量を減らしてくれないし、突発的な仕事がありうるのに、時間だけ短くしろと言っていることだ(逆に目標や、仕事の絶対量や、仕事の振り方に踏み込んでいる企業は本物感ある)。もちろん、ムダはあるし、これでも時間は減るのだが、労働強化になるだけである。精神的にもすり減ってしまう。

それよりも、新しい「いい仕事」像を提示して、その仕事はどうやら今までよりも短い時間で終わりそうだとした方が、精神的な負担はない。労働時間が短くなることは、本来喜ぶべきことなのだが、それがちっともワクワクしない現状を立ち止まって考えてみたい。

もっとも、この論もまた、綺麗事にすぎないと、私自身も思っている。その「いい仕事」なるものが、高度化してきており。電通の阿部広太郎さんとの対談でも、コピーライターの仕事の範囲は大きく広がっており。単にコピーを考えるだけではない。プロデュース力が問われる。しかも、生活者(って広告代理店っぽい用語だな)は多様化を極めている。十人十色どころか、一人百色だ。メディアも変化している。経済的な状況や価値観による分断も問題となっている。これらを衝き動かす言葉を考えるのは簡単なことではない。対談中も、情報収集が大事だという話が出たわけだが、ますますどこまでが仕事かわからなくはなる。

キレイな解決策にはなっていないが、物事はこのように簡単に答えを出すのではなく、ぐるぐる立ち止まって考えることが大切なのだ。

というわけで、宣伝会議の対談、読んでね。

来週の石川明さん、柳瀬博一さんとのイベントでも「いい仕事」って何?という話をする予定だよ。
石川明×柳瀬博一×常見陽平「会社を利用しつくせ!」 〜社内起業、社内自由人、副業という「働き方革命」 『新規事業ワークブック』刊行記念 | 本屋 B&B
http://bookandbeer.com/event/20170417_ev/



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この写真、いいなあ。