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お知らせするのが少し遅くなってしまったが・・・。

いま、出ている『日経ビジネス』のガンダム特集でコメントしている。もろもろ協力もした。

この特集、やられた感がある。というのも、ガンダムビジネスを俯瞰しているだけでなく、テクノロジーという視点でもまとめているからだ。この視点でまとめたガンダム特集は今までなかった。いいね。ウェブ版のオリジナルコンテンツ「企業人、ガンダムを語る。」もいい。こういう、本誌に載りきらなかった内容(決してボツ原稿ではない、むしろウェブ向きのコンテンツで棲み分けていると思う)をウェブで展開するっていいね。

個人的には、富野由悠季監督が、「ガンダムは日本の昔話」という切り口で語っているのが、新鮮なような、やっぱりなというような。



重ねていうなら、これは、昭和の日本企業の物語だと思う。新卒一括採用のような形で組織に取り込まれ、途中、葛藤、混乱、摩擦がありつつもその中で成長していく物語だ。さらに言うならば、味方、敵を問わず、「普通の人」つまり、役名もついていないような軍人や民間人も含め光を当てていた方だと思う。この手の人たちの名セリフ、名シーンというものも多数存在する。

地球連邦軍の旗艦船であるホワイトベースの乗組員にしても主要キャラクターはほぼ「普通の人」であり、その人たちが成長すること、力を合わせることで成果を出している。名鑑長風のブライトですら、初期は、やたらと弾幕を張る、意思決定を多数決で決めるなどという、リーダーとしては未熟と言わざるを得ない行為をしでかしている。乗組員の、いや軍の命を預かっている立場にあるにも関わらず、だ。しかし、やはり彼も軍人として成長していく。

主人公のアムロ・レイにしても、第一話では居住しているコロニーが襲撃されて避難警報が出ているのにも関わらず、自宅で趣味の機械いじりをしているというオタク少年だ。戦争に巻き込まれ自分の父が開発したモビルスーツガンダムを操縦することになる。マニュアルを見つつも、いきなり操縦するところに、才能、センスを感じつつも、途中では軍が嫌になりガンダムごと脱走してしまう。徐々に成長し、ニュータイプとして目覚めていく。結局のところ、天才肌ではあるのだが、とはいえ普通の市民から成長しているのである。最後は、避難船とホワイトベースの仲間を見て、「僕には帰れるところがある。こんなに幸せなことはない」と、戦場に、軍に自分の居場所を見つけるのである。

ジオン公国軍のザク、ドム、ゲルググ、ズゴック、地球連邦軍のジムなど量産型のモビルスーツが多数登場していることも特徴である。一年戦争はアムロ対シャアで行われたわけではない。多数のザク、ドム、ゲルググ、ズゴックと、多数のジムが戦ったのである。別にエリートがすべてを支配しているわけではなく、「普通の兵士」の戦いで物語は進んでいったのである。

このように、『機動戦士ガンダム』は一億総中流時代と言われた昭和の企業社会の物語のように見えるのだ。




主人公が戦争に巻き込まれ、戸惑いつつも成長し、最後に居場所について語るという意味では、ガンダムとエヴァは同じと言えば同じである。ただ、組織というか世界がより不安定である。

決定的にフォーマットが違うのは、ガンダムはコロニーから始まり、宇宙で戦ったあと、地球におり、いくつかの地を動いたあと、宇宙に戻り、最終決戦を迎える。これは事実上の続編の『Zガンダム』もそうだし、いわゆる宇宙世紀シリーズにほぼ共通していることである。

エヴァは、物語のフォーマットとして、ほぼ空間移動がないのだよね。物語はほぼ第3新東京市ですすむ。この空間に使徒が襲ってくる、と。不安定な職場に行くと、日々何かが起こるという。エネルギーが無くなると数分で闘うことができなくなることも含め、ウルトラマンのオマージュという感じ。猫背気味のルックスも、だ。

『新世紀エヴァンゲリオン』は、『機動戦士ガンダム』と比較して、圧倒的に登場人物が少ない。敵は「使徒」と呼ばれるものであり、パイロットとロボットがいるわけではない(女性ファン増加に一役買った渚カヲルのように、人型の使徒がエヴァンゲリオンを操るという場面もあることにはあるが)。

エヴァにも「ファーストチルドレン」等と呼ばれるエヴァに乗ったときの同期率(シンクロ率)の高い「適合者」が搭乗する。もちろん、搭乗する碇シンジ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレーの葛藤や成長なども描かれているし、彼らの戦闘はNERVのメンバーにより支えられているのだが。このように、『新世紀エヴァンゲリオン』は「選ばれし者」を前提とした物語になっている。しかも、彼らが徹底的に使い潰される。不安定な組織、狭い世界で使い潰されるブラック企業時代を予感させるものである。しかも、選ばれた者という妙な責任感を炊きつけられつつだ。

ガンダムの話に少し戻すと、最新作の『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』だが、ガンダムの新作はいつも賛否を呼ぶのだけど、私は楽しく見ている。

この作品は、2015年の労働社会の縮図だと思う。なんせ、巨大ロボットアニメ、タテマエとしては少年向けの作品で、格差を描いているのがすごい。そして、絆を描いている点も。

私のような中年はともかく、現代の少年たちがこの番組をどう受け入れるか、とても気になっている。

さて、『日経ビジネス』のガンダム特集だが、ビジネスパーソンはどう読んだのか。反響が楽しみだ。