仕事のための読書ではなく、趣味としての読書において、音楽批評の本をよく読む。単に音楽の豆知識やトリビア話を仕入れるだけでなく、次に聴くべき曲を探すだけでもなく、時代を読み解くヒントがあって面白い。

いまは、こんな本を読んでいる。完全にタイトル買い。著者の川崎大助氏が日本の『ローリングストーン』誌に寄稿した日本のロックオールタイム・ベストが元になっている。あまり新しすぎるものは取り上げないという方針でまとめたものである。

ややネタバレだが、1位から3位は、はっぴいえんどの『風街ろまん』、RCサクセションの『ラプソディ』、ザ・ブルーハーツの『THE BLUE HEARTS』だった。そして、100位はPerfumeのデビュー・アルバム『GAME』で終わる。

この手のランキングは、何かこうちょっと背伸びしていたり、ジャンルの偏りなどがあったりするし、「入れちゃいけない」アルバムなどがなんとなくあったりするのだが、本当、いろんなジャンル、いろんなアーチストに光が当てられていていい感じ。XやLOUDNESSなんかもランクインしているし、前出のPerfumeや、PUFFYなどややアイドルっぽいアーチストも取り上げられている。

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改めて、日本のロックは、はっぴいえんどの『風街ろまん』なのかぁと思った次第だ。うん、様々な日本のロック本を読んでも、このアルバムが取り上げており。



佐々木敦さんのこの本は、「◯◯の時代」という章タイトルをつけ、まとめられているのだが、(ざっくり)1970年代は「はっぴいえんどの時代」だった。

なぜ、このアルバムは評価されるのだろうか?

率直に最初に聴いた時はピンとこなかった。よくこの手の名盤は紹介される際に「時代を超えて愛される」とか「古さをまったく感じさせない」というテンプレがあるが、私は率直に最初は古いと感じたし、何が評価されているのかわからなかった。

ただ、実はこの感想は庶民のものとしては当然だとも思っていて。日本のロックにおける原点(の一つ)のようなアルバムであるが故に、いまでは当たり前のことがいっぱい盛りこまれていたり。

なんせ、神メンバーである。細野晴臣に、松本隆に、大滝詠一に、鈴木茂だ。しかも、若い頃の。

日本のロックの歴史は、音にいかに歌詞を載せるかという模索の連続なのだが、松本隆は語尾が「です」で終わるというユニークな歌詞を書いている。

これは、先人による大いなる模索なのだ。

川崎さんの本のランキングも、佐々木さんの本も最後は中田ヤスタカ関連で終わっているのも印象的だ。

歴史は先人の模索で動いている。

今年は日本における音楽定額配信元年とも言える年だ。こういう本をキッカケに、若い人(まだまだ日本の古いロックを知らない私のような中年も含む)が昔のロックを聴くといいな。・・・いいのかな。聴くのかな。