35

UNISON SQUARE GARDENの初の武道館ライブに行ってきた。実に良い時間、空間だった。そして、愛されるバンドとは何か。かっこいいロックバンドとは何か。ライブの時代だと言われるが、良いライブとは何かがわかったように思う。

ややギリギリの時間に武道館に到着したのだが・・・。明らかに人が入っていた。人の絶対量もそうだが、期待感、エネルギーを感じた。

ザ・ビートルズなどの大御所洋楽アーチストを始め、日本でも矢沢永吉のように最多武道館記録を持つアーチストがいたり。数々のアーチストが武道館の歴史を作ってきた。

一方、この武道館ライブだが、最近は安売りされているのも事実だと思う。数千人レベルの、渋谷公会堂や東京国際フォーラムに毛が生えたくらいの動員で(それくらいの人が入る程度の客席設定で)、「デビューしてすぐに武道館」など、話題作りのために使われていたり。数々のレジェンドたちが歴史を積み重ねてきた武道館をそんなに安易に使っていいのか、と。もっとも、大規模なコンサート施設だと言えば、それまでなのだけど。

今回に関しては、明らかにお客さんが入っていて、期待度が違うと感じた。Facebookに武道館前の画像をアップしたら、真っ先に格闘家の青木真也選手が、写真から伝わってくる観客が入っている感じ、期待感などについてコメントしていた。うん、何かこうエネルギーを感じる。

お祝いの花がいっぱい。ファンたちの有志による花もある。

会場に入ったところ、こんなに入っている(入れている)武道館は、忌野清志郎さんの復活ライブ(2008年の春)以来かなと思った。いや、武道館はセットの関係で客席を潰さざるを得ないこともあるわけだが。特に吊り物などがないシンプルなステージ(もっとも、最近のライブでは照明などを吊り下げないものも増えているようだが)、1階(実質2階)の後ろまで客席にしていて、とにかく入っているという印象だった。

客電が落ちた瞬間、地響きのような歓声が。なんというか、既にテンションが違う。

実に3時間にも及んだライブは、新旧織り交ぜつつ、実にUNISON SQUARE GARDENらしいライブだった。火柱が立つ、ドラムがせり上がる、ステージ下からエレベーターで登場など、武道館っぽい演出もあったが、良い意味で普段どおりのUNISON SQUARE GARDENのライブだったと思っている。いつもどおり、ボーカル&ギターの斎藤宏介さんは気持ちよく透明感のある声で歌い、少し高めのポジションでギターをかき鳴らす。ベースの田淵智也さんは今日もステージ上を走りぬけ、蹴りあげるパフォーマンスをする。ドラムの鈴木貴雄さんは気持ち良いビートを刻み、時にテクニカルに叩く。汗がここまで飛んできそうなライブ。疾走感、透明感、そしてメロディアス。これもいつもの通りである。ただ、いつの間にか、武道館すら小さく感じるような、そんな風に彼らが変化していたということなのだと思う。みんなのジャンプやダンスで武道館が揺れていた。

はっきり言って、とっくに武道館ライブはやろうと思えばできたのだと思うが、ちょうどデビュー10周年イヤーが終わって11年目に突入するときに満を持して、2004年に初めてこのメンバーでスタジオ入りした日である7月24日に武道館をやった彼らにはこだわりを感じる。彼らより活動期間がずっと長いバンドだが、the pillowsや怒髪天がデビューから長い時間を経て行った武道館ライブや、24年ぶりに武道館ライブをやったPERSONZの「夢の凱旋」のように、なんというか「意義のある武道館」だと思ったのだ。

熱い、暑い武道館だった。なんせ観客もいっぱいいるので、熱がすごい。そして、本編が終わり、客電がつき、客だしの音楽が流れたのに、観客が全然帰らない。熱狂的なアンコールの声だった。地響きのようだった。

メンバー全員によるMCがよかった。鈴木さんは飾りっけのない言葉で、バンドで演奏できることの感謝を述べていた。

泣けたのは、田淵智也さんによるMCだ。

5年前から、武道館ライブの時にはこんなことを言おうと考えていたことがあるが、それはその場ではやっぱり言わない、そう前置きした上で、こんな趣旨のことを言っていた。

「君の好きなロックバンドは、みんなに愛されるような曲は歌ってこなかったし、これからも歌わないと思う。だから人に薦めてくれるのはありがたいけど良い反応はもらえないと思う。それは僕が保証します。」

「でも、君の好きなロックバンドは、世界一カッコいいロックバンドだ。それも僕が保証します」


万雷の拍手だった。

Twitterで「好きなロックバンド」でエゴサーチシてみて欲しい。昨晩くらいからは、田淵智也さんの、このメッセージや、そのオマージュだらけだ。ファンたちも「私の好きなロックバンドは世界一かっこいいロックバンドだ」とツイートしていた。

「君たちの」じゃなくて「君」というのが、いい。ややくさいかもしれないのだけど、語りかけてくれているって感じがする。

アンコールも盛り上がり、圧倒的な充実感で、武道館ライブが終了した。そして、また、それぞれの日常が始まる。

ライブ終了後、ステージで1人になった斎藤さんは、田淵さんと同じ趣旨のことを言っていた。うん、いいね。

なんというか、いま、ここにしかないものを全力でやること、ファンとトコトン向き合うこと、かっこいいということにこだわること、これだと思った音をやること。気づけばみんな30代なのだけど、信じられる仲間と信じられる音楽を続けること。素敵だなと思った次第だ。

音源よりもライブの時代だなどと言われるのだけど、ロックバンドの、ライブのあるべき姿を見たように思う。

ありがとう。