40

産経新聞のオピニオンサイト「iRONNA」に寄稿。お笑い芸人の又吉直樹『火花』の芥川賞受賞問題について。

もう文学賞は「ショー」でいいのではないか
http://ironna.jp/article/1708

論旨を簡単にまとめると・・・。

・まず、又吉直樹の『火花』を読んでからモノを言え。
・出版不況はもはや「不況」ではない。出版業界は「衰退産業」と言ってもいいのではないか。
・作品自体は面白いし、佳作だと思うが、やっぱり又吉直樹だから売れたし、評価されたんじゃないか。
・「又吉直樹」「純文学」「芥川賞」という言葉がひとり歩きしていて、内容については語られていないのではないか。
・私はお笑いを見ないし、又吉直樹のコントも見たことがない。動いているところもほぼ見たこともない。思わず、発売時に買ったが、ずっと積読だった。
・文学賞とは何か。著者のプロフィール勝負になっていないか。賞ではなくショーではないか。販促施策になっていないか(もともとそうだという説はある)。芥川賞などはもともと、新人の発掘的、登竜門的要素があるわけで、最も優れたものが評価されるかというと、そうではない。
・文学賞ごとの違いがわからなくなってきている。本屋大賞問題などはそう。そして、古舘伊知郎がこの件で「芥川賞と本屋大賞の違いがわからない」という趣旨の発言をして炎上したが、読んでからモノを言えと言いたいが、言っていることは間違っていないと思う。
・「売らんかな」の姿勢で増刷を繰り返したことは逆に作品や著者に対しての不信感を高めないか。
・又吉直樹の『火花』が売れただけであって、純文学が活性化されたわけではない。
・今後、著名人に純文学を書かせる競争が起こるのではないか。

これが私の言いたいこと。揚げ足を取りたくてしょうがない人のために少しだけフォローすると・・・。

・売れている作品があることで、人が書店に足を運ぶ、書籍の通販サイトを覗くという意味での業界活性化の意味はある。
この本を手がけた編集者のプロジェクトストーリーは面白いし、良い仕事をしたと思う。
・又吉直樹氏が文学が大好きで、激しく賢い方、才能のある方ということについてはまったく異論はない。

ただ、「これで純文学が活性化」という一言については、最後まで?なのだ。

純文学の売上はこれで胸をはって「伸びた」といえるのだろうか?どの記事においても、データは開示されていない。さらに『火花』の指名買いなのであって、それで他の本が売れるわけではない。他に、一般の読者が知っているほどの新しい作家が出てきたといえるのか。

この件については、読売も朝日も産経も社説やオピニオン欄で礼賛モードだった。ただ、ここで文句を言わなくては「若き老害」の名がすたる。これぞ、「煽り」ではないだろうか。

火花
又吉 直樹
文藝春秋
2015-03-11


まあ、でも、読み物としては面白いかったぞ。才能で食べるということについて3年くらい悩んだが、その気持ちを代弁していたし。

KAGEROU
齋藤 智裕
ポプラ社
2010-12-15


この本まで読みたくなっちゃったぞ。

・・・やっぱり活性化されているのかな。