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「ミスタープロレス」天龍源一郎が「廃業」を表明した。65歳だ。

記者会見を報じるニュースによると
「ここまでプロレスラーを続けてこられたのはうちの家族の支えがあった。一番支えてくれた家内の病気があったので、今、身を引いて今度は俺が支えていく番だと思った。そろそろプロレス人気も盛り上がってきて、潮時かなと思った」

とのこと。ここ数年、彼自身が腰部脊柱管狭窄症で初めての長期欠場をしたり、2度の手術を受け、リハビリなどをしていた。「家内の病気のため」と言うが、本人自身ももう十分、戦ったと思う。

彼らしい引退だと思う。

「ロックバンドの解散とプロレスラーの引退は信じちゃいけない」

というのは、大槻ケンヂの名言だが、天龍源一郎は戻ってくることは無いだろうと信じている。なんせ、潔い、気持ち良い人だから。

そして「家内の病気のため」に「廃業」というのは、社会的に良いメッセージだと考える。「絆」「つながり」なんていう言葉が薄っぺらく消費されるソーシャルメディア時代。「愛」なんて表現も、カラオケのサビや、LINEのスタンプが消費していく世の中。そういう一般的に使われる「絆」や「つながり」や「愛」を私は信じない。ただ、家族の愛は信じたいと思う。家内の病気のために、仕事をやめる自由を私は支持する。

もっとも、プロレスラーを引退するのであって、天龍源一郎を引退するわけではないようだ。会見の報道によると、芸能活動などの可能性は残しているようである。試合はしないものの、興行のゲストなどでプロレスをますます盛り上げてほしい。

「そろそろプロレス人気も盛り上がってきて、潮時かなと思った」

という言葉にも、トップレスラーとしての誇りと責任を感じた。私が知るかぎり彼は、プロレスが盛り下がっている時期にそれを盛り上げるという使命を果たしてきたのだと思う。もっとも、彼がメガネスーパーがスポンサーについたSWSに移籍したことで全日本プロレスの前途が不安になった時代はあったわけだが。ただ、彼が移ることによって、三沢・川田・田上・小橋による四天王プロレス時代が早くやってきたとも言える。

引退試合はまだこれからだが、良い引退宣言だったと思う。ありがとう。