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10月9日(木)に開催する千葉商科大学のシンポジウム「面白い大学のつくり方 〜明るく、楽しく、自由に考える 大学の未来会議〜」に向けた大学の未来を考える対談第2弾は、レアジョブCEOの加藤智久さん。同社はSkypeを活用したマンツーマンの英会話サービス「レアジョブ英会話」を提供。6月27日には東証マザーズへの上場を果たしている。高校時代に大前研一氏の「一新塾」に通っていたという加藤さん。彼の大学論をお届けしよう。

※第1回目酒井穣氏との対談はこちら

■「自分でレールを敷く人生」のために、大学時代にどんな「準備」をするのか
常見:加藤さんにとって、「大学」とは何でしたか?

加藤:私にとっての大学生活は、「人生において生じるリスクへの準備を行う」期間です。現在の日本において、「敷かれたレールの上を歩んでいく」のではなく、自分の力で「レールを敷いて生きてこう」と思うならば、「リスク」を背負うことになります。自分の選択したい道が「リスクの高い」人生であることを自覚できれば、大学時代にその準備を行うことができると思います。

私の場合は、高校時代の経験が、大学生活を構想する上で、大いに役に立ちました。高校時代、周りの友達が当然のように「1日10時間の受験勉強」をしていることに、違和感を覚えて同じように取り組むことができませんでした。私はそこで、受験勉強をまったくやめて、部活と委員会活動の時間以外はとにかく「本を読むこと」に時間を費やしました。

常見:勇気のある決断ですね。なぜ、そうしましたか。

加藤:それは自分がある種の「マイノリティ」であることを、その時に明確に自覚したからでしょう。みんなと同じことをしたいけど、どうしてもできない。「マイノリティの自分は何をすればよいのか」という思考回路で、「受験勉強」ではなく「読書」を選択したのだと思います。

常見:読書に力を入れた結果、どんな収穫がありましたか。

加藤:たくさんの本を読む中で、大前研一さんの著書と出会えたことが、その後の僕の人生の方向性を決める契機になったと思います。彼の考え方に共鳴し、高校生の時から大前氏主催の「一新塾」に参加していました。起業家や政治家やNPOリーダーといった「自分で道を切り開いている」方々のお話を大量にインプットできたことが、自分の糧になっていると思います。また「一新塾」では、一橋大学出身の経営コンサルタントの藤沢烈さんにメンターとなっていただき、一緒に「大学6年計画」を立てました。

常見:6年!追加の2年は何に使うのですか。

加藤:当時の藤沢さんとの相談では、一年間は見聞を広めるために「世界旅行」。そして一年間は「海外留学」をするという予定でした。結果的には世界旅行に行き、もう一年は留学の代わりに、ベンチャーで働きました。一年の休学でベンチャーと出会って、「自分にはこの道だ!」と認識することができてよかったです。

常見:まさに大学生活で、「自分でレールを敷いて生きていく」起業家となるための「準備」が行えたということですね。


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■「自分でレールを敷いて生きていく人」は育成可能か?〜もしも「大学」を作るなら
常見:加藤さんがもし大学を自ら設立するのであれば、どんな大学にしますか。

加藤:「自分でレールを敷いて生きていく」人を対象とした大学ならば、やってみたいです。例えば、起業家になるには、決まったルートがないように思えますが、「どういう人と触れ合うか、どういう経験を積めばよいのか」ということは、ある程度のパターン化が可能です。まず学生自身が「目指すべき道」を決めるサポートをし、その上で起業家や政策秘書やNPOのファウンダーになりたいのであれば、それぞれのキャリアに向けて「成功確率を高めていくプロセス」を提供していくことは可能だと思います。

常見:具体的には、どんなカリキュラムにしますか。

加藤:「自分でレールを敷く人生」と「敷かれたレールの上を歩く人生」のどちらを選びたいのかを、まず学生に認識させたいので、そのために設計したグループワークに取り組んでもらいますね。「自分でレールを敷く人生」が合わないと気づいたら、早めに他の大学へ行ってもらいます。これもまた人生における重要な選択になり得ると思います。「自分でレールを敷く人生」を歩むと決めたら、一年生の後半あたりから、私の参加していた「一新塾方式」で、「自分でレールを敷いてきた」先人の話を大量に聞くことで、自分のチャレンジしたいことを考えてもらうカリキュラムにします。その後は「実際に自分でやってみること」を、休学も含めて、推奨していきたいですね。大学は「こんなことしたらいいよ、しなさい」ではなく、あくまで「こんなことをしてきた人がいるよ」いうことをインプットするだけです。

常見:学生に大学内では味わえない異質な経験をさせる機会として、インターンやギャップイヤーを制度上義務付けるのではなく、チャレンジしてきた人の話をあくまで「インプット」させるだけで、あとは学生自らにチャレンジさせるということですね。

加藤:そうです。その上で、自分で考えた「最適なチャレンジ」を、自分でやれば「本当に自分がやりたいことなのかどうか」が見えてくるはずです。また「やりたかったこと」をやって、「適性」があるのかも判断する必要があります。「自分でレールを敷く人生」に適性があり、「力」をつけられそうならば、足りない部分を、その後の大学生活で身につければいいと思います。例えば、「人に説明するためのロジック」を組み立てる力は、学問やゼミの徒弟制度といった一般的な3、4年生のカリキュラムから学べることが多いと思います。

常見:「1、2年生の内に気づいてもらう」というように、なるべく早い段階で刺激を受けられるようにして、進学または就職の選択をする余裕を持てるようになることはとても重要ですね。

加藤:わが社でもインターンを受け入れているのですが、10代でインターンに来た学生への影響が最も大きいです。やはり「早いうちの学び」というのは重要だと思います。

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■「世界で働く、世界と働く、世界をもてなす」
常見:「ビジネスのグローバル化」が話題になりますが、グローバル業務がはじまっている中堅・中小企業が苦労しています。実は千葉商科大学の卒業生は、北関東の中堅・中小企業で活躍している人も多いです。これらの企業のニーズを考え、どんな人材を育てるべきか考えています。

加藤:冨山和彦さんの『なぜローカル経済から日本は甦るのか』という著書の中で、同様の視点のお話がありました。経済を語る際に、いわゆる「グローバル企業」の話がよくされますが、実際に日本の7.8割の雇用を生んでいるのは「ローカル企業」なのです。ですから日本経済を復活させるためには、グローバルには知られていないけど、ある地域限定で有名な「自らレールを敷いていける」ローカルリーダーが必要であるというのが、冨山さんの本の趣旨です。千葉商科大学の卒業生は、そういった「ローカル」を支える可能性が大いにあると思います。

常見:それは国際教養学部の人材育成の発想に確かに近いです。我々は「世界で働く、世界と働く、世界をもてなす」というスローガンを掲げています。特に「世界と働く、世界をもてなす」が必要な領域であると考えています。

加藤:サービス業の分野で言えば、レアジョブの事業の中で、インバウンド観光向けの英語教育が伸びています。実際に外国人観光客に対応する人材の教育が不足している部分をレアジョブが補っています。

常見:現在、日本全国の宿泊者の約1割がインバウンド観光客だそうです。ビジネスの舞台となる大都市や、有名な観光地はより多いことでしょう。

加藤:すごい数ですよね。例えばホテルなどのビジネスでは、繁忙期以外の時期に「外国人観光客にいかに利用してもらうか」ということがビジネスを成立させられるか否かを決めるカギになっています。

常見:富良野のそば屋が五か国語対応していて、驚いたことがあります(笑)。

加藤:私も世界遺産の高野山に行った際に、唯一外国人観光客で賑わっていたところは、英語で仏教を説明できるお寺でした。アジアの中で周りの国が大きく成長していることは、大きなチャンスです。周辺国の富裕層が3,4年に一回、リピーターとして日本に来てもらうだけで、日本の経済は大いに上向くはずです。インバウンド観光がこれからの日本経済を担うと言えると思います。

■全講義英語化は必要ない
常見:インバウンド観光を担う人材に英語教育という視点から、先ほどの「加藤大学」では授業における「英語」の位置づけは、どのようなものになるのでしょうか。すべて授業は英語の大学なども日本国内で出てきていますが、いかがでしょうか。

加藤:大学教育においては、「英語」はそれほど大事ではないと思います。

常見:「英語は重要ではない」とは、レアジョブの社長がそんなこと言っていいんですか(笑)。

加藤:レアジョブ英会話を使ってもらえば、なんとかなりますよ(笑)。英語が必要になれば、いつでもレアジョブ英会話を使って学べるような環境を我々が作るということが、前提条件としてあります。これからの日本のインバウンド観光を担う人材にとっては、大学時代は英語教育よりも、むしろ外国人でも分かる「論理」で説明する能力を鍛えることが必要であると思います。もちろん学生のレベルによって、英語の補修などは必要ですが、英語=最優先事項と考え、「全授業英語化」のような取組みは必要ないと思います。

常見:「何のために英語が必要なのか」という視点で、大学における英語教育を考える必要があるということですね。ありがとうございました。

加藤 智久氏 プロフィール
株式会社レアジョブ 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)

高校時代に大前研一氏主催「一新塾」へ最年少で入塾。「自分でレールを敷く人生」に目覚める。一橋大学在学中は1年休学しベンチャー企業で経験を積む。卒業後、外資系戦略コンサルティングファームへ入社。2007年株式会社レアジョブを設立。「Chances for everyone everywhere」をビジョンに、英会話を通じて優秀な人材が活躍する場をつくりだし、才能と努力が評価される社会をつくる。2014年IPOを果たす。