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笑っちゃうくらい当たり前のことを言おう。

「いまは、2014年なんだぜ」

極めて当たり前なのだけど、ものを考えるヒントとして大事な前提だと確信した次第である。

先日、初めて虎ノ門ヒルズに行った。どちらかというとオフィスビルなのだけど、グルメスポットなどが大人な感じで楽しめた。ドラえもん、そして公式キャラクターのトラのもんの像があった。40歳のオジサンなのだけど、思わず無邪気に写真撮影したものだった。

ドラえもんは22世紀からやってきたネコ型ロボットだ。のび太の孫の孫であるセワシが、野比家の悲惨な未来を変えるために送り込んだのである。未来を変えるために、未来から送り込まれたロボットという意味ではターミネーターと一緒だ。

ドラえもんの連載が始まったのは今から45年前、1969年である。学園紛争で東大の入試が中止された年だ。中国は初の地下核実験を行った。東名高速道路が全線開通し、アポロは月面着陸した。長年愛されているタバコ、セブンスターや、サラリーマンの友、夕刊紙の夕刊フジが誕生したのもこの年だ。水戸黄門シリーズ、男はつらいよシリーズが始まったのもこの年だ。BEATLESもまだ解散する前だった。

いまは、2014年だ。改めて、あれから45年経っている。ドラえもんは22世紀からやってきたネコ型ロボットなのだが、その22世紀の具体的に何年からやってきたのか、私は知らない。おそらく、作品の中でも正確には公開されていないと思う。ただ、45年、私たちは未来に近づいている。2014年という今を生きている。

そう、2014年なのだ。グローバル化、IT化などを起点としつつ、世の中は凄い勢いで変わっているが、本当に変化したもの、変化するべきだが変わっていないもの、変わらないもの、変わるべきでもないもの、などなど。変化するもの、しないものが世の中にはある。

これをいちいち直視することにより、日々、薄々感じている「不」に気づくし、時にビジネスチャンスに気づく。あるいは、我々人間の暮らしの「変わらぬもの」に気づく。

思えば、故・筑紫哲也の、『NEWS23』における「多事争論」のラストメッセージは「変わらぬもの」だった。今でも、たまに読み返す名文である。

時に時代とズレているものというものがある。

リクルートという幻想
常見 陽平
中央公論新社
2014-09-09


昨日のエントリーにも書いたが、今、『リクルートという幻想』という本を書いている。ゲラの最終直しの真っ最中だ。来週の頭には、私の手を離れる。そういう時期なのだけど、この期に及んで、書きたいことが増えていたりする。


第1章で、やはり以前、このブログでも紹介したリクルートポイントのCMに対する違和感を書き綴っている。

当初、私が抱いていた違和感というのは、リクルートの手のひらで踊らされている感、無理やりリクルートポイントと結びつけようとしている感だった。多様性と可能性なるものを提示しつつ。しかし、それは実に浅いものだった。違うのだ。

このCMを凄まじい回数、見た。

自分の原稿も、何度も読み返した。

このCMの残念な感じの正体が、やっと見えてきた。

一言で言うと、「いまは、2014年なんだぜ」ということだ。

もろもろ2014年とズレていて痛いのだ。

以前は多様性と可能性に人々は飢えていた。いまや、疲れている。

「すべての人生が、すばらしい」というコピーは、何も言っていないのと一緒だ。まだこれが、震災の直後だとか、リーマンショックの後など、想定を超える悲劇の後に放送されていたらぐっときているかもしれない。SMAPが『世界に一つだけの花』を歌う前に、このメッセージを出していたら、まだ新しく感じたのだが、同曲が世に出てヒットしたのは2003年だ。感覚が11年古い。いや、いまだに同曲が一定の支持を集めているという意味では普遍的だとも言えるのだけれども。

紹介される人生の多様性、ルールを破っている感じは、想定の範囲内のことである。

このCMで紹介されているサービス、リクルートポイントなるものも「いまさら、ポイントか」「いままでやっていなかったのか」という感じだ。同社にとって重要なサービスであるのだが、2014年並みから言うと、かなり古いのだ。

そもそも、みんな簡単には踊らないのに、踊らせることができると思っているのが痛い。手のひらが見えないからこそ、手のひらでいつの間にか踊らされているわけだが、手のひら、丸見え。

そもそも、今さらこんなメッセージ、こんなサービスを世に出すことに、同社は2014年という時代を直視しているのかと思った次第だ。大丈夫か、と。

話がズレてしまった。

というわけで
「いまは、2014年なんだぜ」
という視点を、ビジネスに、日常生活に加えてみよう。

何かに気づくはず。

素敵なサムシング!

さあ、今日も楽しくいきますかね。