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先日、中央線で、見かけた就活生2人。いかにもリア充臭がするイケメン、美女だった。八王子方面に向かう電車の中で、その2人の会話は徹頭徹尾、金の話だった。どの業界・企業ならお給料が良いかということについて激論を交わしていたのだ。マナーとしてどうかという声はあるだろうが、就職先選びの基準の一つとして、給料を入れている点は悪くないことだと思う。むしろ、頼もしく感じた。

「好きな仕事ができるなら、給料は安くても構わない」という人がいる。いや、大学を出ても「希望者が、必ず」就職できるわけではないから贅沢も言っていられない時代ではある。年齢とともに、「必ず」給料が上がることが約束される時代でもない。企業として成果につながり、従業員にとって納得感のある評価と給料の仕組みは常に模索中だ。

とはいえ、給料など、待遇のことを調べずに就職先を選ぶのは危険だ。いったんは世の中全体と、業界の相場を調べておくべきだ。将来、結婚・出産・育児、親の介護が必要になった時などには、何かと金がいるものだ。自分自身も仕事で体調を崩す可能性だってある。

有名なエピソードであり、このブログや著書でも紹介したことがあるけれど・・・。ミュージシャンのスガシカオはこんな言葉を残している。2008年春に放送された『情熱大陸』の第500回スペシャルでの、桑田真澄氏との対談の中での一言である。

 「やりたいことが見つからない。いまどうしようか迷ってます」という人には、「とりあえず金を貯めろ」と言ってるんですよ。何か見つかったときに、金がないと行動も起こせないから。


彼は、大学を卒業した後、会社勤めを経験している。約4年間仕事をした後、退職し、ミュージシャンとしての活動を始めた。貯金があったおかげで、半年間何も働かずに音楽に没頭できたのだそうだ。

何かやりたい、特に好きなことをやりたいと思ったときにはお金が必要になることは間違いない。

今日は、これから大学院の修士論文の口頭試問にこれから出かける。大学院に通うことができた理由は、金があったからだ。

もっとも、2年間、完全に仕事を休むほどの勇気もないし、そこまでは金に余裕があったわけではなかったから、働きながら通わざるを得なかったのだけど。何年も勉強のことだけ考えられるくらいに金があったらよかったなと思ったりもするのが、本音ではある。

金にこだわるのは悪いことではない。

先ほどの就活生の話に戻る。とはいえ、どの業界・企業が稼げるかを「正確」に調べることは簡単ではない。求人広告に載っている初任給の金額だけではわからない。どのような手当があるのか、残業がどれくらいあるのかなどを確認しなければならない。

ビジネス雑誌の給料特集や、『就職四季報』などには、具体的な平均年収が記載されていますので参考にはなる。

もっとも、この平均年収も当てにならないのは言うまでもない。あくまで「平均」なので、給料の高い上の世代が釣り上げていることがあるからだ。最近では、企業、所属している事業部、課、そして個人の業績により変動したりするので、ますますわかりづらくなっていると言える。

給料だけでは判断できない部分もある。給料があまり高くなくても、独身寮や住宅手当などが充実していることもあるし。会社の株で大儲けってことも、なくはないし。

もっとも、お給料が異常に高い企業は仕事がきつかったり。福利厚生が異常に良い企業は、そこにどっぷりで社畜化したり。

こういう話をぶっちゃけ話で教えてくれる人はたまにいるのだけど。

ただ、就職先、仕事を選ぶ際に金にこだわることは、まったく恥ずかしくないことだと思うのだ。

「世の中、金じゃない」は美談だけど、言っても説得力がなければ意味がない。稼いでいなくて、人生も充実してそうに見えない人が言っても、僻みにしか聞こえないかもしれないし。相手を心配させてしまっては、意味がないよね。

「会社を辞めて、給料は下がったけど、今が一番楽しいですぅ」といかにも脱社畜ノマド風の人に言われたところで、楽しそうに見えないと意味がないし。成れの果て感が半端ない状態で言ってもね。

金は拍手の数だとも言えるし。

もっとも、納得感のあるお給料と、仕事の充実度というバランスはこれまた難しいのだけど。

というわけで、「世の中、金じゃない」と言って説得力があるだけ、人生を充実させたいと思った39歳の春。

しかし、あの中央線で見かけた男女は、どこに就職するのだろう。若者の◯◯離れと言われるけど、実際はお金の若者離れなわけで。そんな中、頼もしかったな。