皆さんは人見元基さんのことを知っているだろうか。

LOUDNESS同様、日本を代表するハードロックバンドVOW WOWのボーカルだった人だ。LOUDNESSとVOW WOW、ともに世界を目指したが、LOUDNESSは主にアメリカで、VOW WOWは主にイギリスで活躍した。イギリスでは1988年にミュージシャン・ユニオンにも加盟した(やや余談ではあるが、このニュースが、私にとって海外の労働組合の存在を意識するキッカケの一つだった)。イギリスの次に、アメリカに活動の軸足を移そうとしていた頃、1990年に活動を休止した。

ボーカルの人見元基だけでなく、ギターの山本恭司、キーボードの厚見玲衣、ドラムの新見俊宏と実力派揃いのバンドだったが(ベースは当時、外国人のミュージシャンが起用されやや流動的だった)、当時30代前半だった人見元基は職業としてのミュージシャン、商業音楽の世界を引退し、千葉県の高校教諭になった。かつて、海外のフェスでもファンを唸らせた彼は、教壇というステージで今日も活躍している。

90年代後半だったか、新聞でも報道されていた。



そんな彼が、高校の学園祭でプレイする様子をYouTubeで発見した。教員と生徒が一体となった美しい場だった。声もほぼ衰えていない。現在は、年に数回、それこそ夏休みなどにライブをしているようだ。

彼ほどの実力の持ち主だったら、そのまま商業音楽の世界で活躍できた可能性はあったのだが、彼はあっさりと高校教諭に転職してしまった。

うん、こういう人生もありだと思う。

彼は彼で、教育という名のロックを生きているのではないかな。

ただ、大胆な転職のようで、実はまったく資源を活かしていないわけではなくて、彼はどうやら教員免許をもっていたようだし、大学も東京外国語大学だし、ずっと海外で活動して日常的に英語を使ってきたし、人前で話すという仕事をしてきたので、親和性は高かったわけだね。無謀なチャレンジというわけでもないと、私は解釈している。資源を活かした転職なのだ。

そんな彼が、高校を卒業する3年生に送ったメッセージがあった。

これは、樹村みのりさんの『ポケットの中の季節2』(フラワーコミックス)に収録された「おとうと」からの引用である。

人生とは「なぜ」という疑問詞の宝庫であり、
生きるとは、行動と意識の渦中に
おける数限りない覚醒の連続です。

我々は常に自らに問い語りかけ、
この奇跡のような「存在」の無数の燭台を
一つ一つ丹念に認識の灯で飾っていくのです

それらは 星のように輝くでしょう、

生きよ、生きよ、生きて苦しめ!

幸福を祈ります


人生は、いろいろあるから面白い。人見先生もまた、それを体現していたり。

私も転職を繰り返したが、これからも転がる石のように生きていくのだろう。母や妻が望まない不安定な生活をしているのだが、不安定な生活の継続は、不安定の安定なんじゃないかとつい自虐的になってしまう。家族を悲しませることはしたくないが、数年後、どこで何をしているのかがわからないから人生は面白いのだ。