「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)
著者:海老原 嗣生
扶桑社(2010-06-01)
販売元:Amazon.co.jp
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NHK「日本の、これから」を観た。

以前から海老原さんにこの番組のことを聞いていて、期待していたのだ。他にも勝間さん、石渡さん、LMIの小栗さん、他、面談したことがある学生など知っている人がいっぱい。デモの映像には雨宮処凛さんも出ていたな。不思議な気分だった。

城さんや本田由紀さんや茂木健一郎さんにも出て欲しかったな。

まぁ、ツッコミどころやクビをかしげる部分はあるのだけど、「地上波のテレビ番組」ということを考えると頑張った方じゃないだろうか。「認識」「意見」の多様性が可視化されたというだけでも合格点なんじゃないかな。単純な「就活=悪者」「新卒一括採用→いますぐやめろ」という議論にはなっていなかったこと、学生の側からも就活悪者論だけが出るわけではなかったのがよかったかな。

個人的には、海老原さんの意見が一番具体的で現実的だったかな。あと、花村君が言った新卒一括採用を肯定する意見かな。最後に石渡さんが社会人とのつながりに関してコメントしていたのがよかったな。


中には感情論もあった。それだけでは世の中救われないわけだけど、一国民がこう思っているということを発信することは大事。いくら若者の意見が不完全だろうと、それをどうすればいいか?とカタチにするのはオトナの役割だったりして。

他にも真っ当そうで、実は誰も救わない意見にもツッコミを入れるべきだな。

「新卒一括採用廃止」「解雇規制緩和」という勝間さんの意見については、必ずしもみんな賛同しないぞっていうのが映像からもそんな空気が伝わってきた。ややヒール化していたな。ただ、意見の多様性を提示するということ、議論を活性化するという意味ではよかったかも。



何度もこのブログや、著書で書いてきていることだけど、「新卒一括採用」をどうするか、「就活」をどうするか。もちろんそれに関連して、「雇用」をどうするか、「教育」をどうするかという議論はいつもまとまらない。いや、収拾がつかなくなる。


関係する当事者が多いこと、認識の違い、価値観の違いなどからね。どのくらい前提の知識があるかにもよるしね。だから、私は現場の各論が大事だと思っているわけで、日々採用コンサルの現場や、学生向けセミナー、大学の講義、書籍などで小さくても大きな一歩を産み出すことにこだわっているのだけど。


言葉の定義とか、事前の知識で議論が分かれたりもする。


たとえば、「大学生活」という言葉を聞いたときに想像するものも、人によって違うと思うんだな。ある人は教室や研究室を思い出し、ある人はサークルの部室を思い出し、ある人はアルバイトを思いだす。それこそ、今の大学の現状から言うならば、「就活」の光景しか思い浮かばない人もいるだろう。「大学は勉強するところだ!」というご意見はその通りだと思うのだけど、成長する機会は勉強だけじゃないと思っているし。すべての学生がそう思っているわけじゃないだろう。


「昔の学生は勉強した!」という意見がよく出る。本当かね?日経の「私の履歴書」で経営者になった人や、中には学者になった人でも遊び呆けた話がよく出てくるんだけど。


就活の学業阻害が問題になるわけだけど、ある大学の先生は私にこう言った。「そもそも、こんなに大学が入りやすくて出やすいのに、そこで学業阻害を持ち出すのも違いますよ」と。そう、そうなのよ。いや、勉強するなと言っているわけじゃないし、大学改革は時間がかかるのだけど。

大学によっては単位認定の基準が厳しくなっているし(単に出席数に走っているところもあるけど)、大学によっては3年の夏学期でほぼすべての単位が取れてしまうしね。単位=勉強とは言わないけど。


大学に入る力、それで得られる力、就活で求める力、社会で活躍する力はズレてるしね。ただ、これは別に一緒にするのがいいわけじゃないと思う。そこは選び方、育て方で担保できる部分もあるわけだけど。


「中堅・中小企業」と言ったところで、思い浮かべる光景って人によって違うと思うのだな。ある人は地方の町工場を想像し、ある人は青山なんかにあるちょっとオシャレオフィスにある小さな会社を想像するかも。両方、中堅・中小企業であることは間違いないんだな。


あと、「上の世代=悪者論」というのも、ちょっと見直した方がいいかも。まぁ、私もロック小僧、プロレス小僧なので、上の世代に対して「なんだ、この野郎」と思うことは大事にしているけど。番組でも、「年上で使えない人がいっぱい、彼らが居座るのはおかしい」的な意見が出ていたけど、そうステロタイプ化した像を広げるのもどうかね?年齢に限らず、使えない人は使えない。どう化けさせるか、育てるかが大事。そして、現実には解雇規制があっても、グリグリとアウトプレースメントは行われているわけだけど。


個人的にますます問題意識として感じたのは、次の点である。

「新卒一括採用が問題なのではない。やり方が問題なのだ」
「新卒一括採用を廃止しても、解雇規制を緩和しても、今苦しんでいる若者は必ずしも救われない」
「制度の議論もいいけど、個人としての生き方も考えるべき」

ということだな。

最近、関心が高くなっているのは、採用広報と選考の最適化(肥大化の解消と可能な限りの透明化)、出会い方を変えることかな。

考えているアイデアは
「求める人材像の見直し」
→本当にそんな神様スペックが必要なのか?という視点が必要。いや、企業を取り巻く環境は厳しくなっているし、育てる余力もないからしょうがない部分はあるのだけど。妄想的に膨張していくがよくないかな。

「画一的な採用広報の見直し」
→同じようなアピール、やり方をしてもしょうがない。違いを明らかにする。金ではなく、知恵を使う。

「採用の透明化」
→たとえば、「この大学から取ります(少なくとも取ってます)」と宣言するのもありだと思う。ナビサイトで無駄な希望を抱かされて弾かれることもあるわけだから。

「採用プロセスの検証(各プロセスが本当に必要かを確認する)」
→その選考プロセスは本当に必要なのか?ここを検証するべき。肥大化にメスを入れる。中国取材で気づいたのはそこ。まぁ、プロセスに意味があるならいいんだけど。

「マッチング方法の多様化」
→ナビ採用だけでなく、公的マッチング、学校推薦の強化など。

ここから派生するんだけど、中堅・中小企業を大企業のかませ犬にしてはいけない。そして、中堅・中小企業とまとめて考えてはいけないな。意外に求める人物像のレベルが高かったりするし。あと、採用に慣れていないから、企業の魅力の紹介が下手くそだったりもする。

中堅・中小企業と早期に出会う場をつくるといいかも。公共事業で。現在のような、敗者復活戦的な出会いはどうなのだろうか。いや、もちろん、大企業というか人気企業、知名度の高い企業に眼がむくのはしょうがないのだけど。

「その施策は雇用につながるのか?という検証」
→たとえば職業訓練ってどうなんだろう?仕事をするには、「人間性、基本的な生活習慣」「基礎学力」「専門知識」「基礎学力・専門知識を活かす力(社会人基礎力)」が必要。専門知識だけあってもだめ。特に新卒は。「職業訓練」は雇用にいたるポイントを鍛えているだろうか?…この理由から、資格ばっかりあっても学生は内定しないっていうことが分かるんだけどね。

前述したように、未内定者と中堅・中小企業をマッチングする取り組みはあるわけだが、早期の時期にやるほうがよかったりして。大企業を受けて、落ちまくってボロボロになって、中堅・中小企業を受け始めるというのが一般的な流れなんだけど、最初から出会えよ、と。ここは公共事業や、大学タイアップで強化する、と。

ちょっと話はズレるのだが、学生も就活において、内定につながらないことを気にしてそこにパワーがかかっているのは気になるかなぁ。



「新卒一括採用廃止」「解雇規制緩和」は別に若者に優しい施策じゃないからね。より競争にさらされる可能性は意識するべき。



何度も言うが、個人の心構えとしては
「強くなるか、楽しむか」
ということを意識しなくちゃね。うん、いずれにしてもこれは意識しないといけないんだよな。強要するのもカワイソウだけど。世の中すぐには変わらないから、ちゃんと発言する一方でどんな環境でも生き抜く覚悟と準備をしなくちゃなんだな。


まぁ、どんな問題にせよ、議論が収束しない根本には国家のビジョンがないからなんだな。


ビジョンを創ろう、まずは個々人から。


私は、やる。来年は社会を変える仕事をテーマにしようと今、妻と議論していて思った。行政系の仕事をしたいなぁ。そして、提言なんかも書きたいな、かっちりしたものを。

来週28日(火)に予定されている玉置さんとのUST対談では、これからの働き方の議論をしようかな。

今日のオススメアイテムは海老原さんの本。うん、今日、番組で議論されたことがよくまとまっている。個人的には朝日新聞出版から出た2冊が好きなんだけど。

くたばれ!就職氷河期  角川SSC新書  就活格差を乗り越えろ (角川SSC新書)くたばれ!就職氷河期 角川SSC新書 就活格差を乗り越えろ (角川SSC新書)
著者:常見 陽平
角川SSコミュニケーションズ(2010-09-10)
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私の本もよろしくね。今日、出てた議論も結構網羅しているかも。

おやすみなさい。愛しています。
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