電通とリクルート
電通とリクルート

山本直人先生の新作が出た。

献本御礼。

その名も『電通とリクルート』である。

結論から言うと、「面白い!」の一言につきる。そして、なぜかセンチメンタルな、でもポジティブなような、不思議な気分になるのは何故だろう?

それぞれの分野で「メディアの帝王」として君臨(しているはず)の電通とリクルートにスポットを当てつつ、私たちが生きてきた時代が何であるか、人々の感情の変遷を描き、検証している。

電通とリクルートがそれぞれの分野でNO.1であることは間違いないはずだ。まぁ、本書にもあるように領域によっては侵食されているわけだけど。しかし、両社の社員や関係者からは時に、悲鳴が聞こえてくる。いや、まだ健全な危機感ではあるのだけど。日常的に電通社員、リクルート社員やそのOB・OGとはよく会う。

電通社員は「世の中が変化しているのに、吉田モデルから脱却できていないのですよ」と言い、リクルート社員は「世の中が変化しているのに、江副モデルから脱却できていないのですよ」という。

90年代の日産のCMではないが、「変わらなきゃ」という危機感が両社からはヒシヒシと伝わっている。いや、実際、変化に向けて動き出しているのだけど、従来のビジネスに陰りが見えつつも、いまだに絶対額で言えば莫大な利益を生み出しているのは間違いないわけなんだな。これは、「日本企業は今こそグローバルにビジネスをしなくちゃ」という誰も基本的に反対しない正論を言う人と、本音の部分では「とはいえ、国内もいまだにそれなりに大きい市場」と考えている企業の関係にも似ている?

電通に代表される大手広告代理店のマス広告の手法を「発散志向広告」、リクルートのような手法を「収束志向広告」と定義したのも秀逸である。

また、GDPと電通、リクルートの売上の増減などの分析も興味深い。

…リクルートって2007年には電通の3.7倍以上の営業利益を出していたんだよね。うーん。

懐かしい広告や社会現象が取り上げられ、解釈が加えられていることは読み物としても面白かったり。

いかに「欲望」は作られてきたのか、いかに人々は「情報に疲れる」状態になったのか、分析が秀逸。

あと、エピローグが泣けた。じわっときた。山本直人先生の文章って、時に冷たい事実も紹介しつつも、深い、優しいって思えるのはなぜだろう?うん、勉強しよう。

うん、社会論だね、これは。

山本直人先生からこんな本を書くという話を聞いてから楽しみにしていたのだが、期待以上だった。

両社に勤める社員やOB・OG、メディア関係者、両社を志望する学生(今日も会ったな、そういえば)、メディアの仕事に興味を持っている学生にとって間違いなくチェックすべき本だろう。私たちが生きてきた、そして、生きている時代とは何かを考える読み物としても面白い。

マーケティングと人材のプロである山本直人先生だからこそ書けた本であり、この本が出たことはひとつの奇跡である。山本先生、ありがとう!
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